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大分県日田市 猪熊製材所 日田下駄はここから生まれる!

猪熊製材所

日田下駄は、分業で作られている。
先ずは、丸太の木材を下駄用に裁断する製材所。
裁断された木は、下駄枕と呼ばれる。
次に、この下駄枕を木地といわれる下駄の形に加工する生地屋。

そして最後に、この生地を下駄に加工する仕上げ専門の工房で下駄となる。

今回お話を伺ったのは、日田で下駄枕を製材している猪熊製材所の猪熊英一郎さんである。

日田下駄は、主に杉と檜(ひのき)を材料にしている。
製材所にはこれから製材される杉や檜の太い丸太がどっしりと置かれている。

猪熊製材所

その隣には、製材が終わった下駄枕といわれる角材が壁のように積まれている。

猪熊製材所は、英一郎さんの父親が下駄枕専門の製材所として始め、創業からすでに60年程度が経つ。
日田下駄が最も作られていた昭和30年後半から40年初め頃。
その当時、猪熊製材所のような下駄枕を製材する会社が集まった“木取り組合”というものがあった。

「当時は、従業員が4~5名いて、下駄枕をわくところが10数件あったんですよ。」

英一郎さんは学校を卒業して名古屋の会社に就職し、そこで3年程外材を扱っていたという。

現在、日田で下駄枕を“わいている“のは、ここ猪熊製材所ただ1軒を残すのみである。

つまり、今では“天領日田下駄”として登録された日田下駄は全て、ここ猪熊製材所で製材された下駄枕から作られている。

猪熊製材所

日田下駄と杉と檜(ひのき)

日田下駄といえば杉下駄といわれるほど、杉が多く使われるが、一方で檜も良く利用されている。
林業が盛んな日田では、杉も檜もとても身近な素材である。

とても良く似た木である杉と檜であるが、いくつか見分けるポイントがある。一般的なポイントは葉の形を見ればすぐに分る。葉が尖っているのが杉で、尖っていないのが檜である。

では葉がない、丸太の状態ではどう区別するか。
これも、簡単に区別することが出来る。
杉の丸太は外側に比べて中心部分の色が濃く、檜は外側と中心部で色が変わらない。

さらに、目を瞑っていても区別することが出来る。檜は香りが強く、杉は香りがあまりないのだ。

そんな杉と檜だが、一般的に50年を過ぎたものは利用価値があるといわれている。

一方で、さらに時間が経過し、太くなりすぎた木は中心部分に空洞が出来、逆に歩留まりが悪くなり利用価値が下がる。
日田下駄には、大体60年~80年経った木材の根本の部分が使われている。杉や檜は山に生えているため、根本の部分は大きく曲がったものが多い。

そこで、建築材として利用することが出来ないその曲がった部分を下駄に有効利用しているという訳である。

一方で、木の根元は実は材質的に年輪が詰まった最も良いところといわれている。
例えば樹齢80年の木は、どこが樹齢80年かというと、それは木の根元の部分である。大体樹齢が80年くらいになると樹高が20メートルから25メートルくらいになるが、その中で「10メートル先のところは80年たっていないわけですよ。」
つまり、日田下駄は年輪の詰まった一番良いところを使って作られているのである。

猪熊製材所

木をわく

英一郎さんは木をわく際、次の工程のことを考えて、とても気を配って作業を行なっている。一番気を使うのが、節を外して製材するところである。木の中で、節のところはとても硬い部分である。そこを外すことが、何故大切なのか。

猪熊製材所で製材された下駄枕は、次にうらつか工房で下駄の木地に加工される。

「浦塚さんのところも刃物の加工になるんですよ。だから、大きな節があると、例えば親指クラスの節があると刃欠けを起こすんです。」

日田下駄の製材所は、現在猪熊製材所ただ1軒であるが、さらに次の木地に加工する工程を担当しているが、うらつか工房ただ1軒である。そのため、うらつか工房の機械に不具合があると、日田下駄全体に影響を与えることになりかねないのだ。

さらに、英一郎さんが気を使うもう一つが、“あて“といわれる部分。
“あて”とは、傾斜に育った木が倒れまいとして硬くした部分のこと。「例えば台風で木が傾くでしょ。そうするとそれ以上倒れまいとして、その部分を硬くするんです。」あての部分は、ふつうの部分より比重が重く、乾燥しても軽くならないという。英一郎さんは、みれば“あて”がどこにあるか分るという。

「親父から子供のときからアテの事を聞いてましたから。アテとアテのないところの境目をわいてると恐ろしいですよ。」

あてに刃があたると、刃がはじかれたり、のこぎりが止まったりするという。