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大分県日田市 本野はきもの工業 足に優しい天領日田下駄

大分県日田市 本野はきもの工業

今回訪れたのは、大分県日田市である。

周りを山に囲まれた日田は、昔から林業がとても盛んな地域で、それが今でも重要な基幹産業となっている。
江戸時代には筑後川の水運と、九州の中央に位置するという恵まれた条件が重なり天領となったことで、全国から多くの人々が集まった。

そして、周りを有力な外様大名に囲まれながらも、九州の政治、経済、文化の中心として大いに栄えた。
そうした当時の華やかな雰囲気は今でも豆田町に残り、その美しい町並みが平成16年に国の重要伝統的建造物群保存地区に選定された。

現在市内を歩くと、製材前の大きな日田杉の丸太をよく目にする。
こうした丸太の多くは、建築材として利用される。
さらにその一部は、日田名産の家具に加工される。

大分県日田市 本野はきもの工業

日田では日田杉を使った家具製作が大変盛んで、市内には家具を製作する木工所が数多くあり、品質の高さから全国にその名が知られている。
今回お話しを伺ったのはそんな日田で3代にわたり日田下駄を製作している本野はきもの工業の本野雅幸さんである。

本野はきもの工業は佐賀出身の初代によって昭和23年に創業した。

今は3代目の本野雅幸さん(写真左)と2代目のご両親の3人で日田下駄を製作している。

日田では下駄は分業によって製作されており、大きく3種類の工程を受け持つ会社に分かれる。

大分県日田市 本野はきもの工業

先ずはじめに、製材会社が丸太を下駄枕といわれる角材に製材する。
次に、生地会社がその下駄枕を下駄の生地に加工する。
生地会社が加工した生地は、最後に下駄を製作する会社によって下駄へと加工されるのである。

現在本野はきも工業は、この中の下駄を製作する会社として生地を仕入れ、下駄を製作販売している。

日田の下駄は、終戦後に最盛期をむかえた。
最盛期には日田の多くの人々が下駄の生産に携わり、市内には”輪積”された下駄の生地がいたるところに立っていたという。
”輪積”というのは、生地を円く積み上げることを言う。
こうすることで、生地を乾燥させるのである。 「生地は最初湿った状態で入ってくるので、風通し良く並べるんです」(雅幸さん)

かつて大いに賑わった下駄産業であるが、人々の生活様式の変化とともに、今では下駄を履く人をめっきり見かけなくなった。
また最近では、海外から値段の安い下駄が大量に入ってくる。
さらに、下駄の製作現場では高齢化が進んでいる。
こうした様々な要因が重なり、現在下駄産業は「先が見えない」状態が続いているという。

大分県日田市 本野はきもの工業

日田下駄

日田で下駄作りが始まったのは、江戸時代の天保年間といわれている。
日田の下駄は、主に日田杉を材料として作られている。

現在本野はきもの工業では、材料の9割以上が日田杉である。
日田杉には、軽くてクッション性があり、強度もあるという特長があり、下駄の材料に大変適した素材である。

そのため、日田杉で作られる日田下駄は足触りが優しく、履いていて疲れにくい。
こうした素材の特長を生かした日田下駄には、さらに神代焼仕上げという技法によって独特の表情が加えられる。

大分県日田市 本野はきもの工業

神代焼仕上げとは、生地の表面を焼く技法のことをいう。
生地を焼くことで生地を締めるという面もあるが、この技法による一番の効果は、木目の美しさが引き出されるということである。

「一回生地を真黒にしてから磨くと、柔らかいところが削れて、硬い木目だけが黒く残るんです。」(雅幸さん)

神代焼き仕上げを施すことで、すっきりとした柾目の木目や、表情豊かな板目の木目がより一層引き立つのである。
本野はきもの工業では、この神代焼き仕上げのほかに、塗り仕上げも行っている。

塗りを施すことで、下駄の表情が広がる一方で、技術と手間が掛かる。
塗りを担当するのは2代目の廣明さんである。

大分県日田市 本野はきもの工業

廣明さんは、刷毛を丁寧に下駄の上で滑らせる。
そして、塗っては乾かし、塗っては乾かしを何度も繰り返す。

こうして手間をかけて出来上がった下駄に、さらに表情を加えるのが鼻緒である。
下駄は、鼻緒によって大きく表情を変える。

「これはざっくりと、”ヒールっぽい雰囲気のもの”といって、クラフトマンの方に生地を作ってもらったんです」と言いながら、一つの下駄を見せてくれた。

目の前に置かれたのは、これまでの下駄のイメージとはまるで違うミュールである。
女性的な形をした生地に、すっきりとした柾目の木目と、深い藍色の縞が入った鼻緒がとてもバランスよくまとまり、全体的に凜とした大人の印象を与える。

大分県日田市 本野はきもの工業

雅幸さんはこうした製品を、下駄に興味を持ってない方に、”洋服に合わせて”履いて欲しいと考えている。

「下駄に興味を持ってもらって、足を入れたら気持ち良いなと思って貰えると嬉しいかな。そして日田下駄を、もっと全国の人に知ってもらいたいですね。」

本野さんは、全国の展示会などを回って、日田下駄を紹介している。