日本のものづくりを応援するサイト

宮城県石巻市 島津麹店 麹作り107年の歴史

宮城県石巻市 島津麹店

日本の食文化と糀(こうじ)

2013年、和食がユネスコの世界遺産に登録され話題を呼んだ。
正式には、「和食;日本人の伝統的な食文化」という。
和食で大切な要素が醗酵である。

この醗酵を手助けする役割を担っているのが、今回紹介する糀である。
この糀、実は麹菌という菌によって造られる。

和食に欠かせない日本酒(清酒)、焼酎、醤油、味噌、漬物、酢などは、この麹菌の働きである醗酵によって生成される。
こうして古来より日本の食文化を支えてきた麹菌は、その価値が評価され、2006年、麹菌は国菌に指定された。

島津麹店

回紹介するのは石巻にある島津麹店である。
6代目佐藤光弘さんとその父親の佐藤憲光さんにお話を伺った。

島津麹店は、初代の島津新之丞氏によって明治42年に創業された。
それから6代にわたり石巻で糀を造り続けている。

島津麹店は、石巻一帯で糀を造る唯一の麹屋である。
光弘さんにとって、島津麹店は母方の実家である。
憲光さんは、自分の仕事をしながら25年間島津麹店で糀造りを手伝ってきた。
そうして、日本の一番クラシックなつくり方を学んだという。
そんな憲光さんは、今も糀造りの研究を続けている。

「父は調べるのが得意なんです。何でこうなるんだとか。。」(光弘さん)
時には大学の研究論文にも目を通すという。

一方、6代目の佐藤光弘さんが島津麹店を継いだのは、東日本大震災の後のこと。
実は震災前、光弘さんはサラリーマンをしていた。
光弘さんの名刺は、震災後暫く”6代目見習い”としてあったという。

「見習いの間、周りの人たちからは色々な情報や人のつながりなどの支援を頂きました。」(光弘さん)

宮城県石巻市 島津麹店

そうしたことの一つ一つが「息子にはモチベーションになったんだと思います」(憲光さん)

素材選び

「良い素材は、良い製品になる。」
島津麹店に受け継がれている考え方である。
その言葉通り、島津麹店では選び抜かれた素材で糀を造る。
原料となる米は宮城県産の一等米ササニシキ。
これは、ササニシキが生まれた頃からずっと変わらない。

全て作り手と品質が明らかな特別契約栽培のものを直接取引で取り寄せる。
「胚芽粒とか、米の形や水分量が製品にかなり影響するので、今は米の専門業者2社に選定してもらっています。」(光弘さん)

味噌に使う大豆も厳選素材である。
「大豆は宮城県産のミヤギシロメを使っています。」(光弘さん)
ミヤギシロメは宮城県の在来種で、色が白く、大粒で甘みがある。
良い素材にこだわって集めてきた島津麹店では、素材の大部分が宮城県産である。

糀造り

宮城県石巻市 島津麹店

島津麹店では、昔ながらの製法で糀を造っている。
島津麹店の造る糀は、いわゆる米糀といい、米をベースとしている。

そのつくり方は、先ず米を洗い水に浸すことから始まる。
それが終わると、水を切って蒸篭(せいろ)で蒸す。
蒸し終わったら、温度を下げて麹菌をつける。
今では糀造りに関して詳しくデータ化されているが、島津麹店では、長年の経験に基づき、その季節に合った工程に様々な調製を加えながら、最高の糀を造る。

震災の中の糀造り

“美味しく造ること”を代々続けてきた島津麹店にとっての主力商品は、何といっても仕込み味噌である。
それは多くのファンを持つ人気商品であった。

そんな島津麹店が、2011年の東日本大震災で被災し、店は甚大な被害を受けた。
しかし周りに廃材が残る中、光弘さんと憲光さんは、いち早く糀造りを再開する。

糀造りを再開してすぐの頃、
「造った時に、味がおかしいなっていうときがあったんですが、最初何が影響しているのか分らなかったんです」(光弘さん)

宮城県石巻市 島津麹店

しかし、すぐにそれが空気であることに気が付いたという。
糀は様々な工程を経て、出来上がりまで5日程度かかる。
その間、周りの環境を受け易い。
糀を造るその周りでは、多くの瓦礫や廃材が残り、その後片付けが行われている最中であった。

「糀に空気を送らなきゃいけなくて、空気が汚れていると、どうしても雑味を取り込んでしまうんです。」(光弘さん)
麹菌は生きているため、呼吸をするのだ。
造る道具だけを綺麗にしても決して良い糀は作れない。

様々な問題を乗り越え、店の周りの片付けも落ち着き、ようやく島津麹店がリニューアルオープンしたのは震災から3年以上経った2014年11月3日のこと。
「昔は、室という糀専用の部屋があったので今とは環境が違いますが、それでも昔より良いのが出来てるんじゃないかな。」

震災により大きな被害を受けた島津麹店は、多くの人々に支えられ再び活気を取り戻しつつある。
「自分ひとりの力ではここまで来ることが出来なかったと実感しています。」(光弘さん)

生糀

宮城県石巻市 島津麹店

島津麹店の生糀は、無添加で天然素材100%である。
味の特長は、その”甘み”である。
麹菌には多くの種類がある。

多くの種類の中で、島津麹店は代々糖化造用に優れた働きをする麹菌を使っている。
島津麹店では、味噌や醤油などの二次製品の味を考え、素材の味を引き出せる“良いところで”調整している。

そもそも、生糀とは常に麹菌が生きているものをいう。
麹菌が生きているため、常に醗酵が進んでゆく。

それは温度を少し下げただけでは止まらない。
糀の醗酵を押さえるには、添加物を使うのが一般的となっている。
しかし、島津麹店では一切の添加物を使わない。
これは代々守ってきた。

「添加物を入れないというのがうちの信条なんです。」(光弘さん)
島津麹店では、生糀を希望するお客様に対して、生糀を冷凍し醗酵を抑えながら商品を届けている。

宮城県石巻市 島津麹店

華糀

華糀は、生糀と米と水だけで造られた、自然発酵の飲む糀である。
ノンアルコールで、子供でも安心して楽しめる。

生糀と米と水だけで造られている「華糀」は、低温加熱製法で乳製品と相性が良い。
ヨーグルト等の乳製品に混ぜて食べるのがお勧めである。

華がかりが良い

麹菌が綺麗に“ふわっと”でた様子を指す言葉である。
「麹菌が米に綺麗に付いて、毛のような白く“ふわっ”としたものが出た状態を華がかりが良いって言うんです。」(光弘さん)

味噌

島津麹店の主力製品は、仕込み味噌である。
仕込み味噌というのは、いわゆる注文味噌のことを指す。

「例えば、甘めが良いとか、糀は何割入れて欲しいとか。豆10に対して、塩が1.5とか。」(光弘さん)。

今では、お客様から材料を供給していただく、完全オーダーメードの味噌は造っていないものの、100年受け継がれてきた比率の味噌を出している。

宮城県産の大豆、ミヤギシロメに自社の糀を入れ、じっくりと時間をかけて熟成させた赤味噌。

塩分を控え目にし、塩は食塩を使わず、海水塩を使用。ミヤギシロメの持つ素材の甘みを生糀で引き出していく。
焼きおにぎりや、きゅうりなどの野菜と相性が良い。

紫糀(しょうゆこうじ)

紫糀と書いて、”しょうゆこうじ”と読むという。
島津麹店の紫糀は、味噌から生まれる「たまり醤油」を使用。ほのかな甘みが特徴で、素材本来の味を引き立たせる。
この紫糀に合うのが、卵かけご飯。
卵とご飯のそれぞれの素材の旨みを引き立てる名脇役である。

>>島津麹店「華糀」販売サイトへ